身近な電池の進化と、全固体電池が切り拓く未来
2026.07.07
本ブログは、筆者が感じた事柄や発信したい情報を紹介するコーヒーブレイクの第2回です。
今回は、私たちの日常生活に欠かせない存在である「電池」について触れます。
身近になったリチウムイオン電池と火災事故
近年、モバイルバッテリーやスマートフォンなどに搭載されているリチウムイオン電池に起因する火災事故がニュースで取り上げられる機会が増えています。
私たちが日々利用している製品の電池が発火する可能性があると聞くと、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
こうした事故の主な原因として挙げられるのが、リチウムイオン電池の熱暴走です。熱暴走の要因としては次のようなものが知られています。
- 強い衝撃による内部損傷
- 高温環境での使用や放置
- 不適切な充電
一方で、昔から利用されている乾電池については、発火事故を耳にする機会はほとんどありません。この違いはどこにあるのでしょうか。
そもそもリチウムイオン電池とは?
リチウムイオン電池という名前はよく耳にしますが、その仕組みを詳しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
「リチウム」は元素記号 Li で表される金属元素です。一方、「イオン」とは、原子が電子を失ったり受け取ったりすることで電気を帯びた状態を指します。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、リチウムイオン電池を非常に簡単に説明すると、「リチウムイオンがプラス極とマイナス極の間を移動することで、電気を蓄えたり放出したりする電池」ということになります。
スマートフォンやノートPC、モバイルバッテリーなどで広く利用されているのは、この仕組みが高いエネルギー密度を実現できるためです。
発火リスクの背景にある液体電解質
現在主流となっているリチウムイオン電池では、リチウムイオンが移動するための通り道として電解質が使用されています。
この電解質には液体が用いられており、その多くは可燃性の有機溶剤です。
そのため、
- 強い衝撃を受ける
- 劣化によって内部構造が損傷する
- 内部でショートする
といった状況になると、急激な発熱や発火につながる可能性があります。
つまり、リチウムイオン電池の高性能を支えている構造が、同時に安全性の課題にもなっているのです。
乾電池との違い
では、乾電池との違いはどこにあるのでしょうか。
乾電池にも電解液は使われていますが、その多くは水溶液をベースとしています。そのため、加熱されても可燃性有機溶剤のように燃焼することはありません。
もちろん、ショートによる発熱や破裂の可能性はありますが、リチウムイオン電池のような発火リスクは比較的低いとされています。
それならば、リチウムイオン電池にも水溶液を使えばよいのではないかと思うかもしれません。
しかし、リチウムイオン電池は充放電を繰り返して使用する二次電池です。充電時に水溶液を使用すると水が電気分解され、電池としての性能を維持することができません。
このため、現在のリチウムイオン電池では有機溶剤系の電解質が主流となっています。
次世代技術として注目される全固体電池
こうした課題を解決する技術として、近年大きな注目を集めているのが全固体電池です。
全固体電池は、リチウムイオン電池で使用される液体電解質を、文字通り固体電解質に置き換えた電池です。
実は、この技術そのものは決して新しいものではなく、研究開発は10年以上前から世界中で進められてきました。しかし、実用化に向けた技術的ハードルが非常に高く、本格的な量産化には時間を要してきました。
全固体電池の実現によって期待されるメリットとしては、
- 電気自動車の航続距離向上
- 充電時間の大幅短縮
- 発火リスクの低減
- 電池寿命の向上
などが挙げられています。
電気自動車だけでなく、スマートフォンやノートPCなど、私たちの生活に身近な製品の利便性向上にも直結する技術と言えるでしょう。しかし、全固体電池への期待は、単なる機器の性能向上にとどまりません。
エネルギー分野では古くから、「電気はつくるよりも、貯める方が難しい」と言われてきました。2019年には日本人研究者の吉野 彰氏がリチウムイオン電池の開発への貢献によりノーベル化学賞を受賞しました。
リチウムイオン電池は現代社会を支える基盤技術の一つとして高く評価されています。
将来、全固体電池が広く普及することで、より安全で便利な社会が実現するかもしれません。今後も蓄電池技術の進歩に注目していきたいと思います。